夢の三角木馬

ما رأيت وما سمعت

2022年ベストアルバム

 

こんにちは、半年ぶりですね
前回の記事が去年の年間ベストアルバムですか、そうですか

今回の記事は、なんと今年のベストアルバムです

いやーなんとなく年間ベスト記事を何らかの形で10年も書いてきて、1年締めくくりの恒例行事に自分の中でなってしまったもんだから、流石に年末の時期になると妙な焦燥感が生まれるんですよね、まあ勝手にそう思い込んでいるだけで別に書かなくてもいいんですけど

でもここ数年記事を書く手が重く、とりわけ昨年度のベスト記事に至っては書く気が全く起きずに、結局今年の6月に書くトンチンカンな事になってしまったわけですが、今年は何となく早めに書こうという気が沸いているんですよね

僕は何か外側に向かった動機があるとやる気になる人間なのかもしれない

というのも僕みたいな人間、いわゆる"音楽は好きだけど能動的に発信しようという意欲が無い"タイプの人をTwitterで多く見かけることがあって(この辺りは去年スペースの一時的流行で音楽好き相互フォロワーが増えた事も起因する)、その辺りの人たちが、自分の今年気に入った作品を列挙したメモをスクショして、その列挙したアルバムのジャケットを結合させた画像と一緒にツイートとして流しているのをこの数日だけで2桁単位で目撃したんですけど、

 

あれ味気ないですね……
いやそのツイートが悪いとかではなく、自分が気に入ったものをキャプションも付けずにただ作品名だけ提示して処理してしまう行為、それがあまりにも散見されると、「本当に気に入ってんの?」と疑問が沸いてしまうというか……

加えて、今や音楽好きのサブスク全入時代、ここ数年で自分の目に触れてこなかった作品が指数関数的に増えていると年末に実感しますが、そんな時代に自分の好きなものをプレゼンする絶好の機会をみすみす逃している状況なのが勿体ない!

勿体ないんですよ、こんなに自分語りが全国的に許されている時期なんて年末くらいしか無いでしょ!自分語りといっても誰かに聞いてもらうだけでなく、未来の自分が過去の自分を参照するのにも非常に便利ですからね

とにかく、「本当に好きな物なら熱量持って接しろ!」みたいな体育会系の話がしたいのではなく、どれほど拙くても、2022年その時の自分のメンタリティやムード等を文章としてその場に置いておくだけで、横の繋がりとして、また自己の振り返りとして非常に価値のあるものになるだろうと今年の僕は思いました


そんな訳で、今年もベストアルバム10枚選び、拙いながらレビュー/感想も書きました

2022年の僕はそんな感じです

 

 

 

10.White Ward「False Light」

ウクライナのブラックゲイズバンドの3枚目。
ボーカルの高まる情動に呼応するかのように響くサックスが、流れの中で一旦冷めかけた熱を一定の温度に保ち続けている。それが作用して、アルバム全体から怒りのような力強さを感じるのは確かだが、その中にも冷静な理性を持ち合わせているようだ。

パワフルさとメランコリックな情緒、2つが重層的に掛け合わされた作品。

 

 

 

9.羊文学 「Our Hope」

微睡の中で現実を強く歌った作品。
2020年に疫病が蔓延してから閉塞的な空気が急速に進んだ世界に、"それでも世界ってのは捨てたもんじゃない"と、天国と地獄が入り混じる外の景色を見ながらあっけらかんと言い放つ。

サウンドに関しては、前作に比べ大分陶酔感が薄まった気もする。ギターで覆われていた個々の楽器隊の味の良さが明瞭になることで、表現の幅広さを如何なく発揮している作品となった。

 

 

 

8.SASAMI「Squeeze」

昨年Metallicaの「Black Album」トリビュート作品に参加したRina Sawayamaの「Enter Sandman」カバーを聴いた時にも感じたのだが、ポップスとしてのメタルのテクスチャーを、ポップスの定型を根幹から崩すことなく上手に取り込む事が、現代ポップミュージックの普遍的な所作として生み出されているのだと思った。

SASAMIの魅力にはそこに"潔さ"が加わっている。いくらでも着脱可能なテクスチャー、そしてそれを可能たらしめるSASAMIとしての音楽の母体。SASAMIならば次の作品に全く異なる音楽性を提示しても、それを受け入れられる程に作品の成熟度が濃い。

 

 

 

7.Sigh「Shiki」 

メタルにはめっぽう疎いので今作でSighの存在を知ったが、なるほどこれは面白い、ドゥーム的な重さも持ちながら、HR/HMのような軽さも持ち合わせている。
ブラックゲイズのようなノイズ感も持っているが、Deafheavenのようにポストロック/ドリームポップ寄りではなくあくまでもメタル側の重心に寄りかかっている。

この作品がきっかけで2001年作「Imaginary Sonicscape」も聴いた。これもまた傑作だった。この作品にはブラスサウンドが加わっておりJohn Zorn「Naked City」のようなハードで先進的なジャズの装いもある。

Sighはあらゆる音楽性を飲み込んで、メタルの文脈で正しく配置し直している。その底知れなさと快楽に興味が尽きない。

 

 

 

6.Bill Callahan「YTI⅃AƎЯ」 

Bill Callahanの作品に出合ったのは「Apocalypse」だが、それ以降の作品を追っていると、細やかにだが確実にギターの音色、展開の大胆さ、他ジャンルへの拡張が行われている。
John Faheyのようなミニマリズム的ギターに朴訥な調子の歌を詩の朗読のように紡がれていたスタイルから、シュールさを醸す捻くれたフォーク/ロックサウンドに変わり、
軽やかにメロディに乗せて歌おうという気概も感じる。

これまでダブやスロウコアを大きな要素の一つとして組み上げた作品も出してきたが、今作はそれらを一旦通り過ぎた果ての地に立っているのかもしれない。

 

 

 

5.Neptunian Maximalism

「Set Chaos to the Heart of the Moon」

ベルギーの実験的ロックバンドNEPTUNIAN MAXMALISMのライブアルバム。

極めて強く呪術的なイメージを想起させるバンドではあるが、そのイメージに負けず劣らず、ドゥームメタル~ダークジャズを横断したような深く暗いサウンドで、効果的に聴き手の感情を意図的に揺り動かそうとする。

時折見せるインプロヴィゼーションのような即興性からくる微かな不均衡、そのバランスの崩し方すらも予測された運動であるかのようで、何か人為的な意図を伴って行われる密教の儀式に垣間見える瞬間がある。故にアルバムを聴き終えるまで、精神の糸を切らしてはならない気分にさせられる。

「動」の発露すらも「静」に思えるほど、鈍重で粘りが強い作品。

 

 

 


4.Sundae May Club「少女漫画」

青春の雑味をこれほど愛おしく拾い上げてくれる作品があっただろうか。

どこかで誰かが経験した、今考えると恥ずかしくなるような青臭さ、あの時とるに足らないと思っていた物が、今になってかけがえのない物だと知った後悔、"君"にとってのありきたりな日常が"自分"にとって人生最高だと思えるような日、そんな歌詞には変化球無しまっすぐストレートのメロディがピッタリはまる。

ソングライティングのセンスにはインディーの地力をここに見た気がした。初夏の帰り道に思い出しては少し胸の奥が痛む物語を8編そろえた傑作。

 

 

 

3.Daniel Rossen「You Belong There」

Department Of Eagles、Grizzly Bearのメンバーとして名高いDaniel Rossenの初ソロ作。

DOEの2008年作「In Ear Park」の頃にもあった、フォークミュージックの佇まいのようで何か別の音楽を聴いているような奇妙な違和感、不安定なようでよどみなく流れるメロディ、不気味な華美さや洒脱さ、そのどれもが居心地が悪いはずなのに一種のアンビエントのようにさらりと聴けてしまう普遍性も兼ね備えた、幽霊のように不可思議で掴みどころがないが、裏を返すと何度でも聴き返せる作品になっている。

今まで聴いてきた音楽のテクストから抜け落ちてしまったかのような、極めてオルタナティブ性の強い作品。

 

 

 

2.Viagra Boys「Cave World」

暗闇で踊るならこんな音楽。
Front 242を思わせる電子インダストリアル的なEBMミュージックを基盤としながら、エネルギッシュで官能的なボーカル、ズシンと来るパンキッシュなダンスビート。

音楽に"踊らされる"なんていつぶりだろうか、頭で音楽を理屈立てて知覚する前に本能で体を動かしたくなるなんて…

しかし大体の作品において、1周目でこのような感想を抱くのが関の山で、2週目を聴き始めるとそういった感情が段々薄れていくのだが、この作品はそれが無かった。

何度聴いても1周目と同じ感情が沸き上がってくるのは正しい傑作の証だと思う。

 

 

 

1.black midi「Hellfire」 

誰がどう聴いても奇妙奇天烈なプログレを作ってしまった事実が恐ろしい。

変拍子を多用するアプローチからしばしば高円寺百景と比較される今作、高円寺百景と明確に違うのは、高円寺百景でいう所のMagmaのような何か大きな参照元を見出せない所にあり、そのブラックボックス化されたバックボーンを様々な形で還元している所であるだろう。

今作は「Welcome to Hell」,「Sugar/Tzu」のような動の要素を極端に発揮した部分だけでなく、「Dangerous Liaisons」のようにカンタベリーよろしくジャズロック的振る舞いを(あくまでblack midi的解釈ではあるが)ソツなくこなしている点も注目してみると、
遠くの俯瞰から見ると奇妙奇天烈だが、近づいてみると細かな調和が端々に見られる作品でもある。

奇怪でカオスな間違いない大傑作。

2021年ベストアルバム10枚

 

 

うす
今更すぎるというか同じ音楽界隈の人だったら今年の上半期ベスト記事を出すような、
そんな今年も半ばにさしかかってしまった時期に、
あえて去年のベストアルバムを選出しました

普通に書くチャンスを逃してた
新しいノートPC買ってエルデンリングやらSEKIROやら仁王やらやってる暇あるなら
さっさと書いておけば良かった、もう6月やん…

 

10.Fievel Is Glauque - God's Trashmen Sent to Right the Mess(Jazz PopProgressive Pop)

 

9.Fuubutsushi - Shiki(AmbientChamber Jazz)

 

8.Unknown Me - Bishintai( AmbientNew Age)

 

7.Genesis Owusu - Smiling With No Teeth(Neo-Soul)

 

6.Koreless - Agor(Progressive Electronic)

 

5.The Mellows - BLMS(Psychedelic Rock,Downtempo)

 

4.Toki Fuko - Human Design(Ambient TechnoAmbient Dub)

 

3.black midi - Cavalcade(Avant-Prog)

 

2.Floating Points/Pharoah Sanders/London Symphony Orchestra - Promises(Post-MinimalismThird Stream)

 

1.ORESAMA - CONTINEW WORLD(J-PopElectropop)

 


てな訳で2021年のベストはORESAMAでした~
前作もその年の1位に選出しましたが、今作はその時と違った明るさを見せてくれるアルバムでしたね
完全に純国産なエレクトロポップJ-POPで、
閉塞的な気持ちを完全に取り払ってくれる底抜けに明るいサウンドは健在でした

 

Floating Pointsの空間に溶けていくようなミニマル系電子音が、
Pharoah SandersLondon Symphony Orchestraの織り成す厳かで神秘的なジャズサウンド

完全に密着するでもなく要所要所で顔を出しながら段々と周りを包んでいく音の空間が心地よかったです

 

black midiはロックの新しいカオスを創造したと言えるのではないでしょうか
今年の新譜の先行シングルも中々、いやかなりヤバかったので来月の発売に期待が強まってます


以上かな
去年のしこりを取り払った
年末はちゃんと書きます、形式上でもいいから書きます
ではまた

2020年のベストアルバム30枚

今年もこの記事を書く時期になってしまいました。
あっという間の2020年でした、なんだか1年どころか半年ぶりぐらいのペースで書いてる気がします。
この1年はどこかに遠出してレコ屋巡りをすることが出来なくなった代わりに、通販やBandcampで音源を買い漁っていた年でした。
しかし今年はここ数年で一番忙しく、中々音楽を聴く時間も取れていないだろうな、と思いRateYourMusicで自分が今年新しく聴いた音源の数を数えたら、12月9日現在の時点で709枚(内新譜225枚)聴いていました。
我ながら執念を感じましたね。
まあ執念もそうですが、今年から聴き方を大幅に変えまして、以前までは駄盤や名盤、どんな作品でも最低5回はリピートする事を心がけていました。
そんな中、今年の中頃にとある音楽好きの人と話している中で、その人が「沢山の作品を聴いていると良い作品かそうでないかは1回聴いただけでわかる」と仰っていて、そこから自分の新しい聴き方に着想を得ました。
今後は今まで3000枚聴いてきた自分の勘を信じてみようかと思い、リピートの回数を5回から2回に減らし、一層自分の感性を研ぎ澄まして耳を傾ければ、今よりも多くの作品に触れられるのではないかと考え付きました。結果700枚の作品に触れる事が出来ましたし、良し悪しを判断する自分の基準がより濃くなった気がします。
一方で、何回も聴く事で良さが浮き出てくる作品を見落としているのではないか、という不安も頭の片隅にいて、今後この不安をどう払拭しようか模索していこうと思っています。
まず来年は聴く音楽のジャンルをもっと狭めて、同じジャンルの作品に沢山触れて
より理解を深めながら評価基準を固めていきたいと考えてます。そんな来年の目標(展望?)を持ちながらとりあえず今年の良かった作品をランキングで振り返ります。

このランキングにある作品はどれも2回どころではなく最低4~5回、ほとんどそれ以上聴いてます。本当にお気に入りの作品を選びました。
よろしくお願いします。

 

 

30.Hen Ogledd/ Free Humans (Art Pop, Synthpop)

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29.Pendragon/ Love Over Fear (Neo-Prog, Symphonic Prog)

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28.Loathe/ I Let It In and It Took Everything (Alternative Metal, Shoegaze)

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27.Sunny Day Service/ いいね! (Indie Rock, Alternative Rock)

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26.Duval Timothy/ Help (Neo-Soul, Nu Jazz)

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25.Kenny Segal & Serengeti/ AJAI (Abstract Hip Hop)

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24.Liv.e/ Couldn't Wait to Tell You​... (Neo-Soul, Psychedelic Soul)

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23.Suso Sáiz & Suzanne Kraft/ Between No Things (Ambient)

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22.Panchiko/ Ferric Oxide (Indie Rock, Trip Hop)

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21.Zebra Katz/ Less Is Moor (Experimental Hip Hop, Deconstructed Club)

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20. Roedelius/ Tape Archive Essence 1973​-​1978 (Ambient)

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19. Gezan/ 狂 (Noise Rock, Neo-Psychedelia)

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18. Hania Rani/ Home (Chamber Pop, Ambient Pop)

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17. Dua Lipa/ Future Nostalgia (Dance-Pop, Synthpop)

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16. Fleet Foxes/ Shore (Indie Folk, Folk Rock)

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15. TALsounds/ Acquiesce (Ambient, Minimal Synth)

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14. Cadu Tenório/ Monument for Nothing (Dark Ambient, Post-Industrial)

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13. Gunn-Truscinski Duo/ Soundkeeper (Psychedelic Rock, American Primitivism)

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12. Pontiac Streator/ Triz (Ambient Dub, Glitch)

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11. King Krule/ Man Alive! (Art Rock, Post-Punk)

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10. さよならポニーテール/ きまぐれファンロード (Indie Pop)

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ほぼ毎年のように出しているさよならポニーテールのアルバムも今作で8枚目である。
ジャケットのファンシーさ/ポップさとは裏腹に内容はミドルテンポの曲が多く、30分ほどで一周出来る長さなので、コンパクトにまとまっている印象が強い。
しかし単曲ごとに見ると、これまでには無かった新しい(奇妙な)試みをしている曲が多数あり、(「初恋ペンギン」でのローファイな打ち込みサウンドや、「それゆけジャーニー」での過去曲のセルフオマージュetc...) 油断ならない作品だ。
紋切り型にならず、かといってアーティストのイメージを崩さないようにしながら新しいポップスを作り続ける事に今年も敬意を表したい。

 

 

 

9. Naujawanan Baidar/ Volume 1 & 2 (Islamic Modal Music, Psychedelic Rock)

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The MyrrorsというUSバンドのフロントマンNik Rayneによって制作された
数十年前のカブール地方の音源を再構築させた、アフガニスタン・サイケコラージュ。
元々Nik Rayneの在籍しているバンドがサイケデリックロックを中心とした音楽を作っていたため、自然とそのような空気を帯びてしまっているのか、はたまたこのアラビックな土着音楽そのものに宿っているミステリアスさを「サイケデリック」という言葉に自分が都合よく同化させているだけなのか。
このザッピングされた景色に蠱惑的な魅力を受ける一方で、自分が全く触れてこなかった概念を勝手に自分の言葉で定義してしまう事の危うさも感じている。

 

 

 

8. 青葉市子/ "Gift" at Sogetsu Hall+アダンの風 (Chamber Folk, Ambient Pop)

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今まで青葉市子と真剣に向き合っていなかったことを謝罪したいほどに素晴らしい。
何となくSpotifyで配信されていたライブアルバム「"Gift" at Sogetsu Hall」を聴いて、
張り詰めた緊張感と鬱屈とした歌詞と対比するかのような、穏やかで柔らいがしかし芯の通った歌声に心を持っていかれてしまった。
新しいスタジオアルバム「アダンの風」では、今までのクラシックギター1本だけではなく、過剰になりすぎない程に装飾を施して彩りに華を添えた作品になっており、より雰囲気に深みがある作品になった.。

 

 

 

7. Fools/ Fools' Harp Vol. 1 (Ambient, Progressive Electronic)

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有名インディーロックバンドGrizzly Bearのドラマー、Christopher Bearの別名義
Foolsによるアンビエント作品。
満遍なく響く柔らかいシンセの中に不規則に鳴らされる特異な金属音、森の中を想起させるような丸みのあるパーカッションの音など、それぞれの曲群の中で様々な素材を駆使しており、Christopherのマルチインストゥルメンタリストとしての実力がいかんなく発揮されている。

 

 

 

6. Protomartyr/ Ultimate Success Today (Post-Punk, Art Punk)

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ポスト・パンク界でも異彩を放つProtomartyrの5th
人を簡単に寄せ付けないアングラでゴシックな空気を纏っていた初期の頃に比べ、キャッチーでノイジーなギターや怪し気なブラスサウンド等が加わり、シリアス度はそのままにバンド特有の音の層の厚みを見せつける作品となった。

 

 

 

5. Neptunian Maximalism/ Éons (Avant-Garde Jazz, Drone Metal)

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ベルギーの実験的ロックバンドNEPTUNIAN MAXMALISMの2nd
ドゥームメタル~ダークジャズをクロスオーバーさせた下地にノイズ・サイケなどの付加要素を散りばめた2時間超えの大作
ジャケットのアートワークは金子富之の「畏敬金剛(2014)」から使われている。
この作品は各章のタイトル「To the Earth」、「To the Moon」、「To the Sun」から連なる三部作で構成されており、アルバムのコンセプトの核にもなっている宇宙的・自然的思想や音楽的要素の一片はSun RaやJohn Coltraneに影響を受けたものらしい。
様々な情報が折り重なって生まれるこの重苦しさは「Swans/The Seer」に似たものを感じるが、こちらはポストロック的な静と動の反復は無く常にほぼ一定の上がらずも下がりきらないテンションで付きまとわれる分、作品の印象が聴き手のコンディションにかなり左右されそうではある。
心身が不調な時に聴くのは勧めない。

 

 

 

4. Golden Retriever & Chuck Johnson/ Rain Shadow (Ambient, Drone)

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バスクラリネット奏者Jonathan SielaffとシンセサイザーMatt CarlsonによるデュオGolden Retrieverと、ギタリストChuck Johnsonによるユニット。
雨雲を含んだ風が山を越える際に、風上側で雨が降り、風下側は陰となって乾燥する現象である「Rain Shadow(日本語では雨蔭)」というタイトルの通り、前半はクラリネットとシンセの作り出すまっさらな広々とした空間に、荒涼さを表現する単音のギターが点々と置かれ、乾いた空気を醸し出している。
後半に行くにつれ段々とシンセの音に揺らぎが生まれ、クラリネットの音色が艶やかさを増し、荒涼とした大地に陰を落としていくような湿っぽさを演出する。
そのような想像をしながら聴くのも楽しいが、ただただシンセの爽やかな音に身を任せるだけでもいいかもしれない。

 

 

 

3. Bastien Keb/ The Killing of Eugene Peeps (Dark Jazz, Downtempo)

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なんだ……!!!?このアルバムは…?
50~60年代映画の劇伴音楽のような重いブラスサウンドで始まったかと思いきや、次のトラックではピアノと弦楽器で構成されたバロックポップサウンドに、Justin Vernonのようなファルセットボイスで歌っている…かと思いきや「La planète sauvage」の劇伴のようなサイケ感溢れるダークジャズが始まり、そしたら次はPink Floyd「Speak to Me」のオマージュのようなギターソロが現れて、もうお腹いっぱいだ!と思った辺りで急にダウンテンポのビートと共にヒップホップサウンドに早変わり……

イギリスはウォリックシャー出身のマルチインストゥルメンタリストBastien Keb
キャリア3枚目となるこの作品は全体的にダークジャズの空気を纏っているがとにかく忙しない。
自身の色々な影響を隠そうともせずにアルバムにあれもこれもと突っ込んで、結果非常に混沌としたダウナーな作品に仕上がっている。

ちなみに上記のような感想を抱いた後に購入先のBandcampの作品紹介コメントを見たら、Bastienは「Bon Iverとしばしば比較されるアーティスト」であり、今作は
「想像上の映画音楽」として作成されたものである事がわかり、まんまと作り手の思惑に乗せられてしまったな、と少し悔しい思いをした。

 

 

 

2. Hasami Group/ DOITORA (Indie Rock)

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日本のインディ界で異彩を放ち続けるHASAMI groupの20枚目のアルバム。
自分はフロントマンの青木龍一郎がYoutubeで上げている曲は一通り聴いているが、過去のディスコグラフィをしっかり追ってはおらず今作が初めて聴いたフルアルバムとなった。
まず、ソングライティングが抜群に良い。こちらのツボを的確にさりげなく押さえてくる明るくて切ないコード/メロディを前半の曲の中に入れながら、おちゃらけた世界観の中でハッとするような真理を突き付ける歌詞を差し込んでくるセンスがとても見事。
後半にいくにつれ不穏な曲調とシュールでどことなく不安になる物語を朗読しているような歌詞が前半の空気とうまく折り重なっていて、そして最後のトラックで名残惜しい哀愁を残しながらアルバムが終わる。

完成度が出来すぎていて恐ろしさすら感じてしまった。
もしかするとその創作の源はフロントマン青木のYoutubeディガーとしての一面と関係があるのでは、と考えたが、その話は長くなりそうなので後は各自で。

 

 

 

1. Robert Haigh/ Black Sarabande (Ambient, Modern Classical)

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今年ほど「癒し」が必要な時間を求めた年は無かったし、寂しさを覚えた年は無かった。
どこへも行くことが出来ず、面と向かって友人と話す事がどこか後ろめたさを感じてしまったこの年で、自分の心の拠り所の一部である音楽に、自分の渇望する感情の穴を埋めようと必死だったのかもしれない。

この音楽は「癒し」である。
悲愴なメロディラインを奏でる揺蕩うような音のピアノと、奥行きの反響がもたらす没入感。今スピーカーでこれを流しながら横になって目を閉じたら、すぐに眠りに落ちてしまうほど安心させてくれる音楽だ。

しかしながら音楽は自身の渇望の穴を完全に埋めることは出来ない。
穴の一部を「癒し」によって(暫定的に)埋めることが出来ても、音楽では埋まらなかった他の部分がより際立ってしまう事になり、アルバムの再生が終わると同時に、空虚な穴から冷たい風が体を通り抜ける感覚に陥る。

音楽が持つある種の特効薬の役割と、全能性の否定。
聴き手の初歩として分かっていたはずだったのに、この作品を通してその事実を改めて突き付けられると、より一層寂しさが増す。

 

 

 

2010年代個人的名曲ベスト100(アーカイブ)

 

去年Twitterにタイトルのコンセプトで音源付き動画として投稿した所、見事DMCA規約に引っかかってアカウントが一時的にロックされてしまい(当たり前)、動画ツイート全削除を余儀なくされてしまったため、ランキングのアーカイブが消えてしまったので、動画は載せられない(もしかしたらニ〇ニコ動画で個人的にUpすr……ゲフンゲフン)けれども備忘録としてランキングだけはこの記事に残しておこうと思います

一応10位までは動画リンク貼っておきます(暇なときに100位まで貼るかも)

 

 

2010年代個人的名曲ベスト100

 

1.Foals "My Number"(2012)
2.さよならポニーテール "放課後てれぽ~と"(2017)
3.Kendrick Lamar "i"(2014)
4.Deerhunter "Desire Lines"(2010)
5.吉谷彩子 "恋のオーケストラ"(2012)
6.泉まくら"東京近郊路線図"(2013)
7.Ryan Hemsworth "Cream Soda(with Tomggg)"(2014)
8.Vic Mensa "Down On My Luck"(2014)
9.Girls Dead Monster "Last Song"(2010)
10.さよならポニーテール "ナタリー"(2011)

11.Ariel Pink's Haunted Graffiti "Only In My Dreams"(2012)
12.Suede "Like Kids"(2015)
13.尾崎由香 "僕のタイムマシン"(2018)
14.北園みなみ "電話越しに"(2014)
15.Negicco "土曜の夜は"(2016)
16.本日休演 "ダンス・ダンス・ダンス"(2018)
17.HONNE "Me & You"(2018)
18.ウワノソラ'67 "年上ボーイフレンド"(2015)
19.Grizzly Bear "Yet Again"(2012)
20.Broken Bells "Holding On for Life"(2013)
21.Chima "urar"(2018)
22.Base Ball Bear "文化祭の夜"(2015)
23.さよならポニーテール "光る街へ"(2015)
24.Eminem "Berzerk"(2013)
25.どうぶつビスケッツ×PPP "ようこそジャパリパークへ"(2017)
26.The New Pornographers "Dancehall Domine"(2014)
27.魏如萱 "I will be fine"(2013)
28.The Shins "Simple Song"(2012)
29.ウワノソラ'67 "シェリーに首ったけ"(2015)
30.Yoko Ono Plastic Ono Band "Cheshire Cat Cry"(2013)

31.Couple "Brief Pop"(2015)
32.ayU tokiO "恋する団地"(2014)
33.Ablebody "One Dime A Day"(2016)
34.小林大吾 "ダイヤモンド鉱"(2014)
35.Galileo Galilei "Imaginary Friends"(2012)
36.吉澤嘉代子 "らりるれりん"(2013)
37.The Tallest Man On Earth "Burden of Tomorrow"(2010)
38.ORESAMA "流星ダンスフロア"(2017)
39.Justin Timberlake "Suit & Tie"(2013)
40.Domo Genesis "DAPPER(feat.Anderson.Paak)"(2016)
41.Deerhunter "Breaker"(2015)
42.Jimmy Eat World "You With Me"(2016)
43.北白川たまこ (洲崎綾) "ドラマチックマーケットライド"(2013)
44.Negicco "矛盾、はじめました。"(2016)
45.野崎りこん,SHAKABOOZ,nera_K,ぼくのりりっくのぼうよみ,TWOFACE "COCK PITT"(2014)
46.押本ユリ(CV:渡部優衣)/新庄かなえ(CV:三森すずこ)/高宮なすの(CV:鳴海杏子)/板東まりも(CV:花澤香菜) "ツッパリくんvs関取マン"(2016)
47.Girls "Honey Bunny"(2011)
48.ONIGAWARA "シャッターチャンス'93"(2016)
49.Neon Indian "Annie"(2015)
50.RedFaces "Wise Up"(2017)

51.Arctic Monkeys "The Hellcat Spangled Shalalala"(2011)
52.!!! "NRGQ"(2017)
53.JJJ "BABE(ft.鋼田テフロン)"(2017)
54.RHYMESTER "The Choice Is Yours"(2013)
55.Foo Fighters "In The Clear"(2014)
56.Daft Punk "Fragments of Time"(2013)
57.泉まくら "愛とよべよ(feat. 野崎りこん)"(2017)
58.Tame Impala "Expectation"(2010)
59.Kendrick lamar "A.D.H.D"(2011)
60.The Weeknd "Can't Feel My Face"(2015)
61.北園みなみ "夕霧"(2015)
62.LambC "Lady"(2017)
63.Lamp "A都市の秋"(2014)
64.Paramore "Hard Times"(2017)
65.Shellac "Dude Incredible"(2014)
66.Tobias Jesso Jr. "Can We Still Be Friends"(2015)
67.Neko Case "Man"(2013)
68.Disclosure "F For you"(2013)
69.さよならポニーテール "この夜のすべて"(2012)
70.PRIMAL "Proletariat(feat. PONY)"(2013)
71.Boris "Flare"(2011)
72.Base Ball Bear "恋する感覚(feat.花澤香菜)"(2013)
73.クラムボン "Rough&Laugh"(2012)
74.Death Grips "On GP"(2015)
75.LAMA "Spell"(2011)
76.KID FRESINO "Coincidence"(2018)
77.Childish Gambino "Me and Your Mama"(2016)
78.台風クラブ "春は昔"(2017)
79.My Morning Jacket "Believe (Nobody Knows)"(2015)
80.Delorean "Grow"(2010)

81.Yo La Tengo "Ohm"(2013)
82.Deerhunter "Helicopter"(2010)
83.Galileo Galilei "ウェンズデイ"(2016)
84.Drugdealer "Fools"(2019)
85.藤岡みなみ&ザ・モローンズ "ウインク・キラー"(2015)
86.Klaxons "There Is No Other Time"(2014)
87.Marilyn Manson "Deep Six"(2014)
88.Andy Stott "Violence"(2014)
89.Battles "Ice Cream"(2011)
90.竹達彩奈 "齧りかけの林檎"(2014)
91.Alt-J "In Cold Blood"(2017)
92.The Jungle Giants "Creepy Cool"(2015)
93.Weezer "Cleopatra"(2014)
94.Protomartyr "Scum, Rise!"(2014)
95.オーイシマサヨシ "楽園都市"(2019)
96.Saku "Zombie Morning"(2014)
97.Base Ball Bear "Low Way"(2017)
98.Travis "Where You Stand"(2013)
99.あいまいみーまいん "めーきゃっぷ!"(2014)
100.Lamp "1998"(2018)

Car Seat Headrestの新譜があんまりにもだった話

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いぇーい
今月Car Seat Headrestが2年ぶり(正確には4年ぶりなのか?)に出した「Making a Door Less Open」についてまあ色々と言いたい事があるというか、これを書いている最中にもアルバム5周目に突入し何とも苦い顔をしながらこの感情を文章として残しておこうと思い久しぶりに更新に至ったわけですが、いざ書こうとなると何から書けばよいやらと、下書きのメモ帳の前でキーボードを打つ手を止めて天を仰いでおります


じゃあ知ったキッカケとなる2015年の「Teens of Style」から遡っていきましょうかね
発売された当時はあまり気にも留めてなかったのですが、Rolling Stone誌の2015年のベストアルバムに選ばれていたのがキッカケで聴いてみようかと聴いてみた所、ジャギジャギしたギターの感触ともったりしたBPMで、一聴すれば退屈、しかし何回か聴くと独特なフックの強い部分が現れていくという何ともヘンテコな作品だったのを記憶しています


そして翌年の「Teens of Denial」の先行シングル「Fill in the Blank」で心をガッチリと掴まされました

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印象的なギターイントロから始まり、ローファイでインディ臭さが抜けきってない芋っぽさを身に纏いながら、疾走感のある曲調に仕上がってるこの曲が入ってるなら、もう名盤ほぼ確定だろうと思い迷わず発売直後にタワレコでCDを買いました

他にもシングルカットされた「Drunk Drivers/Killer Whales」はもうアンセムと言っていいレベルの出来で、

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前半の抑鬱のような黒い感情が次第にうねり出して躁に向かって爆発していく展開は、プログレの方法論をインディーにそのまま置換させたような曲で、僕はこの曲を2,3回聴いた時点で、自分の音楽リスナー人生の中でハイライトとなる作品になってくれるだろうと思いました。
アルバム全体の内容も前作「Teens of Style」の流れを受け継いで、野暮ったさや垢ぬけてない感じを出しつつもより抜けの良い音作りになっており非常に素晴らしい作品でした


ちなみにこの辺りの時期にBandcampで公開されている自主制作時代の作品(上記2作品はマタドールから出てます)を聴き漁りましたが、まあ……自主制作だし…素材は凄く良いから録音環境やマスタリングをしっかりやれば良い作品なんだろうな…という感じで有名レーベルから出す事の重要性の一つを噛み締めていました


しかしそう思ってたのを分かっていたかの如く、2018年にその自主制作時代に出した、
ファンの間では人気の高い作品である2011年作「Twin Fantasy」を再録して発売されました
僕の思ってた通り素材の良さも最大限に引き出されながら、「Beach Life-in-Death」のような展開の波が激しい長尺インディープログレ

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(今作のライナーノーツによればPink Floydの影響下で作られたものらしい)等もありつつ、Car Seat Headrestにしたらポップすぎるのでは?と思う程キャッチーでダンサンブルな「Nervous Young Inhumans」

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も印象的で、全体を通して聴くと再録前の作品を最大限に美味しく調理し、かつ前作「Teens of Denial」から受け継いだ流れを澱みなく引継ぎアップデートしていったので、再録にも関わらず物凄く新鮮な新作として聴く事が出来ました


そして去年、ライブ盤「Commit Yourself Completely」が発売されました
僕はライブ盤は基本的に聴かないので未聴ではあるのですが、曲目にFrank Oceanの「Ivy」カバーがあるのが少し目を引きますね
これは結構自分の中で意外なんですよ、と言うのもライブ盤は聴きませんがライブ映像は良く見るので、ボーカル兼フロントマンのWill Toledoはぶっきらぼうに歌うというか、スタジオ録音と違いかなりラフに歌うんですよね
そんな彼がR&Bのカバーとは珍しい、とは自分の中で思いました


そして今年!!ライブ盤や再録を除くとおよそ4年ぶりとなる新作「Making a Door Less Open」が!!発売されました!!!
勿論スタジオアルバムですので買う予定ではあるのですが、一応!一応!作品の輪郭はどうなっているのか試聴してみようと思いSpotifyで聴いてみましたよ
途中まで聴いた印象ですが「……打ち込み色強くない?」という疑問が真っ先に出てきました、とにかくドラムの打ち込み色が前に出ていて生のギターロック感が薄れています
そしてアルバムの途中で完全に電子一色に染まったEDMもどきの曲が出てきた辺りで
「これはしっかり自分で買って確かめねば」と思い試聴を止め、即Amazonで購入ボタンを押しました
購入ボタンを押してから届くまでの間、一応この2年間でのフロントマンWill Toledoの活動を調べていると、どうやら2018年からAndrew Katzというビートメイカー/プロデューサーと手を組み「1 Trait Danger」というユニットでヒップホップ/エレクトロポップ系のアルバムを2枚発表していたようです

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聴いた感じ結構おふざけ要素も強いユニットのようですが、その2作品を経て今回のCSHの新作はそのAndrew Katzもかなりプロダクションに関わっており、今回僕が第一印象で抱いた打ち込み要素の原因となったようです

そしてもう一つ、CD盤を聴き終わった直後「…そういえばSpotifyで聴いたEDMっぽい曲無かったぞ…?」という疑問が湧きました
これに関してもやはり理由があり、ファンがそれぞれのメディア媒体で聴き比べた結果によると

・CD盤、LP盤、配信盤で音源の内容が少しずつ違っている
・特定の曲でremix等の再編集がなされていない事を加味すると、元の音源として参照すべきはLP盤、次いでCD盤になる

という事がわかりました(画像は海外サイトRedditにて貼られた比較表です)

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でまあ、ここからは自分の感想なんですけども
ロックバンドとしてある程度想定内の場所に冒険してしまったなーという失望です
インディーロックの発展の流れの中で電子化/ダンスロック化って避けられない部分だろうし、特に四つ打ち系はその傾向が強いのも、
ストパンクバンドBloc Partyが2016年に出した「Hymns」、
バロックポップバンドBelle and Sebastianの2015年作「Girls in Peacetime Want to Dance」、
日本のバンドで言うとGalileo Galileiの2012年作「Portal」等々…
挙げていけばキリが無いといいますか、"生の補正できない部分に打ち込みによる音の色や配置が全て調整された部分をどう折り込ませていくのか"みたいな実験要素って一回は通ってもおかしくないと思うんですよ
僕が大好きな日本のバンドBase Ball Bearもあれだけ生のグルーヴに拘ってきていたのに、2018年にフロントマンの小出祐介がマテリアルクラブという名義で完全打ち込みアルバムをセルフタイトルでリリースしていましたし、
なので驚くべき新開拓では無いのはわかってる上で、このバンドもやっぱりそっちに向かって行ってしまったか~…という想定外な想定内の流れにガッカリしてしまったのが大きいですね
あと、僕みたいなそこまで音の聴き分けやら分析やらが出来ない人でも打ち込みだとわかるくらいにはドラムの音色がダサい!!2曲目の「Can't Cool Me Down」なんかはダサすぎてドン引きですよ

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他にも印象的でカッコいいギターのリフがあるのですが、打ち込みドラムのダサさが全部それを帳消しにしている部分が多いです


数年前からWill ToledoはTシャツからガスマスク+作業服という独特なアーティストビジュアルに変えてこれまでの典型的なインディ然としたイメージの脱却を図ろうという意識は見た目から分かるのですが、ガワの変化に中身はあんまり追い付いて無いですね、というより完全に不相応すぎて違和感しかないです

とは言え良い所もあって、歌詞の暗くてシュールな世界観は健在ですし、何よりアルバムを一周するのに43分という驚異の短さ!!(近年のアルバムは基本的に70分越えでした)
音以外に何かを削ぎ落そうとしているのか、それとも曲の新しい構成方法を開発しているのかはまだ聴いていても分からないのですが、そういった見えない水面下での実験的な動きが次回以降芽を出す事を願ってます


という感じで何か衝動的にキーボードを叩いてしまいましたが一応文章としてまとめられて良かったです

終わり

 

 

ちなみにSpotifyで聴いたダサいEDMっぽい曲というのは↓です(CD盤未収録)

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(ダセぇ…)

 

今年の良かった新譜ベスト25

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今、年の瀬で仕事納めだとか色々ゆっくり出来るような体勢に周りがなりつつあるのを横目に、年末年始関係なくひーこら言いながら年を越しそうな予感を感じている僕です
というか今現状ひーこら言ってるので、この記事を更新できたことが奇跡だと思っています。
偉いぞ俺

もう5年以上何らかの形でベストアルバムを発表している為、今更後に引けなくなった気持ちもあるので今年も発表する形となりました
自分がその年何に触れてきたのか、何が好きだったのかを未来の自分が確認できるようにするのは、自己アーカイブ化の形の一つとして機能するのではないかと思います
なので出来るだけこのブログはしっかり続けられるようにしたいですね、ほんと
音楽に接するという行為は、何に対しても熱しやすく冷めやすい自分が唯一ハマった趣味なので、今回のベストも出来るだけ時間をかけて検討して選びました。
では今年もよろしくお願いします。

 

 

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25.「Boogie - Everything's for Sale」(Hip Hop)

 

 

 

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24.「Shinichiro Yokota - I Know You Like It」(Electronic)

 

 

 

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23.「Christian Scott aTunde Adjuah - Ancestral Recall」(Jazz)

 

 

 

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22.「Octavian - Endorphins」(Hip Hop)

 

 

 

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21.「Drugdealer - Raw Honey」(Rock)

 

 

 

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20.「Czardust - The Ra(w) Material」(Hip Hop)

 

 

 

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19.「Deerhunter - Why Hasn't Everything Already Disappeared?」(Rock)

 

 

 

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18.「Celestial Trax - Serpent Power」(Ambient,Electronic)

 

 

 

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17.「Félicia Atkinson - The Flower and the Vessel」(Post classical,Ambient)

 

 

 

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16.「Sudan Archives - Athena」(R&B)

 

 

 

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15.「YBN Cordae - The Lost Boy」(Hip Hop)

 

 

 

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14.「星野源 - Pop Virus」(Pop)

 

 

 

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13.「Jonny Nash - Make a Wilderness」(Ambient)

 

 

 

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12.「Little Brother - May the Lord Watch」(Hip Hop)

 

 

 

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11.「The Caretaker - Everywhere at the End of Time」(Ambient,Experimental)

 

 

 

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10.「さよならポニーテール - 来るべき世界」(Indie pop)
正直近年のさよポニの作品はテンションのアップダウンが激しい印象を受けていたが、
(前前作は"動"、前作は"静")
ここに来てどちらにも振り切らない中庸な作品が出来上がった。
多種多様な角度で攻めてくるさよポニは、これまでとは違った顔をまた僕らに見せてくれた。

 

 

 

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9.「Leo Svirsky - River Without Banks」(Post classical)
ベルギーのピアニストによるミニマル的クラシカル作品
僕のような一般人の視点からでも音や構成が複雑化されていると分かるが
その複雑さの外側にある(ある程度は)分かりやすい旨味も味合わせてくれる。
内部を覗くと恐ろしく深い穴が広がっているだろう。

 

 

 

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8.「Pure Bathing Culture - Night Pass」(Indie pop)
アメリカはポートランド出身のドリームポップ系バンドの新作。
2013年の「Moon Tides」よりぼやけた音像になりながらも柔らかさが心地よい
どこか懐かしさも漂うメランコリックな曲調はパワーアップされている。

 

 

 

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7.「Lightning Bolt - Sonic Citadel」(Noise rock)
1曲目の冒頭20秒で「これこれこれですよ!待ってました!」と血沸き肉躍る
本当どこを切り取ってもLightning Boltのひん曲がりノイズが聴けるので、
ある種の安心感がある。

 

 

 

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6.「Big Bend - Radish」(Ambient)
オハイオ州出身の電子音楽家Big Bendの2枚目。
打ち込みドラムの音がピアノと連動し音全体がぼやかされ、全てが淡い色合いになっていく。
見当たりの良い非常に優れたアンビエント系ポップ

 

 

 

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5.「泉まくら - As Usual」(Hip Hop)
いつものように過ぎる日々の中で一つの情景を掬い取り、そこに確かに存在する刹那性を普遍的なラップに昇華する行為の尊さに、感謝の正拳突きをしながら収録曲「sunshine」を聴く

 

 

 

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4.「The Chemical Brothers - No Geography」(Electronic)
一昔前はブイブイ言わせてた"あの"ケミカルブラザーズ新作がとても良かった。
正直90年代の頃の音の古さとバンドサウンドに近づいた時の大味な感じが好きでは無かったので、
電子音の無機質さが際立ちつつもちゃんと今の音にアップデートされてる今作はすごく好き

 

 

 

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3.「Mavi - Let the Sun Talk」(Hip Hop)
シンプルだけど何回も聴けるヒップホップ。
低音で気だるさを感じさせるようなフロウに、
少しトリッキーだけど重くてジャジーなビートの相性がとても良かった。

 

 

 

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2.「Lamp - "A Distance Shore" Asia Tour 2018」(Indie pop)
ただただ優しさに溢れた音楽を、どこか張り詰めた緊張感のあるライブで演奏された
Lampの自主レーベルで限定販売された2枚組のライブ盤。
「最終列車は25時」のライブver.イントロを聴けただけで満足。

 

 

 

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1.「おとぼけビ~バ~ - いてこまヒッツ」(Punk)

このアルバムを一聴してすぐに「今年はこれ以上の作品は無いな」と確信した。
「13 Songs」、「Repeater」辺りの初期Fugaziから強く感じ取ることのできる
奥の底から煮えたぎる熱量とハードさを持ちながら、耳当たりの良いリフとメロディアスなボーカルが
開き直った女の憎しみ/情念が強く込められた歌詞とここまでマッチしているとは…
一周した直後は呆気に取られてしまった(本当に聴いてる最中は衝撃と困惑の感情が渦巻いてた)
何か自分の中で転換点になるかとかそういう作品では無いのだけれど、
この作品が自分の今までの流れのようなものの中から急に割って入ってきた突然変異のような存在なので1位にする事自体は自分で納得がいっている一方で、
このランキングでは物凄く浮いてしまってるのも面白い

14曲で26分というのもメチャクチャ良い。1曲ごとに聴くよりアルバム単位で聴いてほしい。
下のリンクは公式レーベルがYoutubeでアルバムフルでアップした動画なのでマストチェック

 


Otoboke Beaver - ITEKOMA HITS (Damnably 2019) [FULL STREAM]

人知れず親知らず、俺にも知られず

 

今日は午前中に親知らずを1本抜いてきたんですが、2年前に1本抜いた時より遥かに痛くてベソかきながら帰ってきました

本当はもう1本片側にも生えてるっぽいんだけど、奥歯なのに思いっきり真横に生えてたから「ウチの病院じゃ抜くのは無理」と断られ1本だけ抜いてきました

麻酔をまず歯の根元に打たれて30分ぐらい待った後に抜き始めたけど全く麻酔の効果が無いレベルで痛くて、思わず呻いたら追加で麻酔を打ってくれたもののそれでもメチャ痛いので手を挙げて抵抗の意を示したら「我慢してね」と言われて続行されました、無慈悲

なんであんなに医療技術はめざましい発展を遂げているのに歯を抜く時だけ人力なのかが分からない、テコの原理で抜くな痛いから

まあ親知らずの話題は良いよ別に、明日になったら大体の腫れやら痛みやらは引くから

 

最近の近況でも話そうかね

んー何から話せばよいやらって感じなんだが、10月くらいに某けもの系アニメのキャラクターに扮したアカウントの音楽語りコミュニティ(←なんのこっちゃ分からんとは思うけど理解しようとしなくても良いです)に招待された事がそこそこ驚いた出来事かな

半年くらい前にあのアカウント全体のコミュニティ自体は話題になって、ネットニュース記事やらAbemaのニュース番組に取り上げられたりしてたのは知ってたけど、僕が知る限りではその後1か月も経たない間に一部で内輪もめが起こってコミュニティー全体が自然消滅したと思っていたのだけど、とあるアカウントから「Discordでそのコミュニティの中でも音楽好きが集まってワイワイ語るグループがあるから来ないか」と招待を受けた時に、「まだ存在してたんや!!」と驚いたのと同時に「なんで俺?」という疑問も湧いた

その好奇心の延長線上でグループ内のメンバーでDiscordから紐付けしてるTwitterのアカウントを時折覗いてたけど良くないね~

ちょいちょいしょうもない内輪もめ紛いの事は断続的に起こってたり、政治/宗教色が強かったり病んでたりするアカウントが多くて、見ているこっちが精神的に疲弊しそうだったんで、深追いするのは止めようと思い、Discordのやりとりだけに留めることにしたわ

まあでもこうして一部の界隈に触れるだけでもあのコミュニティの独自性は面白いと思ったね、自分の正負問わないキャラクター性と、同じ仮面を被っている匿名性の両方を兼ね備えた個によってコミュニティが成り立つのはこの界隈かもしくはベネチアの仮面舞踏会ぐらいだろうから

以上何の話か分からん人にとってはさっぱり分からん話でした

 

 

あとギター買った

僕には数年前一人暮らししていた頃に、食費に困って泣く泣くエレキギターを売り払ってしまった悲しい過去がある

しかし先月11月の半ば頃、5連勤→1日休み→5連勤という中々ハードなスケジュールで働いてた時、2回目の5連勤の4日目あたりで休憩中飯もそこそこにぐったり机に突っ伏していたら、口から何ともなく

「…ギター弾きたい」

とポツリと出てきてから何故かかなりギターへの欲求が高まり、給料入ったら真っ先にギターを買おう、どうせならアコースティックギターをと強い気持ちでハードスケジュールを乗り越えたのだった

そして給料日を迎えた当日、運が良く休日でもあったので家の周りにある楽器屋で5~6万ぐらいのアコギを買おうと勇んで向かったのだが、あいにく目的の店が臨時休業だったので、ガックリと肩を落としつつ2つ目の候補として選んでいた楽器屋に向かった

ピアノとエレクトーンしか置いてなかった

マジで知らんまま入ったから「ふんふんなるほどね~」なんてスカした感じでン十万台の楽器を眺めながら店を一周して出て行った後1軒目よりも深く肩を落とした

3軒目の楽器店は長距離になるのでバスを待ちながら今日は開店してるか/ギターが置いてあるかを検索していたら、ふとGoogleマップのクチコミレビューが目に付いて、見ると星5つ中2.4で「どういうことだ⁉」と思いながらレビューを見ると

"店員(店長?)の対応が最悪でした"、"楽器の買取りもやってましたが、やたらといちゃもんレベルのケチをつけてきて通常買取価格の〇割の金額を提示された"、"どれも市場価格よりかなり上乗せされて売られている"、"この地域一帯は楽器屋もほとんどなく競合店がいないからこんなに上乗せできるようになってるだけ、ここで買うぐらいならネットで注文しろ"

僕はバスに乗りハードオフに行って2万円のYAMAHAのアコギを買いました

 

「ギターなんて弾きたい時に買うのが一番だよな~」などと一人部屋で宣いながらサニーデイサービスの「セツナ」をジャカジャカ弾く毎日です

 


Sunny Day Service - セツナ【Official Video】

 

 

以上