夢の三角木馬

ما رأيت وما سمعت

Car Seat Headrestの新譜があんまりにもだった話

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いぇーい
今月Car Seat Headrestが2年ぶり(正確には4年ぶりなのか?)に出した「Making a Door Less Open」についてまあ色々と言いたい事があるというか、これを書いている最中にもアルバム5周目に突入し何とも苦い顔をしながらこの感情を文章として残しておこうと思い久しぶりに更新に至ったわけですが、いざ書こうとなると何から書けばよいやらと、下書きのメモ帳の前でキーボードを打つ手を止めて天を仰いでおります


じゃあ知ったキッカケとなる2015年の「Teens of Style」から遡っていきましょうかね
発売された当時はあまり気にも留めてなかったのですが、Rolling Stone誌の2015年のベストアルバムに選ばれていたのがキッカケで聴いてみようかと聴いてみた所、ジャギジャギしたギターの感触ともったりしたBPMで、一聴すれば退屈、しかし何回か聴くと独特なフックの強い部分が現れていくという何ともヘンテコな作品だったのを記憶しています


そして翌年の「Teens of Denial」の先行シングル「Fill in the Blank」で心をガッチリと掴まされました

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印象的なギターイントロから始まり、ローファイでインディ臭さが抜けきってない芋っぽさを身に纏いながら、疾走感のある曲調に仕上がってるこの曲が入ってるなら、もう名盤ほぼ確定だろうと思い迷わず発売直後にタワレコでCDを買いました

他にもシングルカットされた「Drunk Drivers/Killer Whales」はもうアンセムと言っていいレベルの出来で、

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前半の抑鬱のような黒い感情が次第にうねり出して躁に向かって爆発していく展開は、プログレの方法論をインディーにそのまま置換させたような曲で、僕はこの曲を2,3回聴いた時点で、自分の音楽リスナー人生の中でハイライトとなる作品になってくれるだろうと思いました。
アルバム全体の内容も前作「Teens of Style」の流れを受け継いで、野暮ったさや垢ぬけてない感じを出しつつもより抜けの良い音作りになっており非常に素晴らしい作品でした


ちなみにこの辺りの時期にBandcampで公開されている自主制作時代の作品(上記2作品はマタドールから出てます)を聴き漁りましたが、まあ……自主制作だし…素材は凄く良いから録音環境やマスタリングをしっかりやれば良い作品なんだろうな…という感じで有名レーベルから出す事の重要性の一つを噛み締めていました


しかしそう思ってたのを分かっていたかの如く、2018年にその自主制作時代に出した、
ファンの間では人気の高い作品である2011年作「Twin Fantasy」を再録して発売されました
僕の思ってた通り素材の良さも最大限に引き出されながら、「Beach Life-in-Death」のような展開の波が激しい長尺インディープログレ

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(今作のライナーノーツによればPink Floydの影響下で作られたものらしい)等もありつつ、Car Seat Headrestにしたらポップすぎるのでは?と思う程キャッチーでダンサンブルな「Nervous Young Inhumans」

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も印象的で、全体を通して聴くと再録前の作品を最大限に美味しく調理し、かつ前作「Teens of Denial」から受け継いだ流れを澱みなく引継ぎアップデートしていったので、再録にも関わらず物凄く新鮮な新作として聴く事が出来ました


そして去年、ライブ盤「Commit Yourself Completely」が発売されました
僕はライブ盤は基本的に聴かないので未聴ではあるのですが、曲目にFrank Oceanの「Ivy」カバーがあるのが少し目を引きますね
これは結構自分の中で意外なんですよ、と言うのもライブ盤は聴きませんがライブ映像は良く見るので、ボーカル兼フロントマンのWill Toledoはぶっきらぼうに歌うというか、スタジオ録音と違いかなりラフに歌うんですよね
そんな彼がR&Bのカバーとは珍しい、とは自分の中で思いました


そして今年!!ライブ盤や再録を除くとおよそ4年ぶりとなる新作「Making a Door Less Open」が!!発売されました!!!
勿論スタジオアルバムですので買う予定ではあるのですが、一応!一応!作品の輪郭はどうなっているのか試聴してみようと思いSpotifyで聴いてみましたよ
途中まで聴いた印象ですが「……打ち込み色強くない?」という疑問が真っ先に出てきました、とにかくドラムの打ち込み色が前に出ていて生のギターロック感が薄れています
そしてアルバムの途中で完全に電子一色に染まったEDMもどきの曲が出てきた辺りで
「これはしっかり自分で買って確かめねば」と思い試聴を止め、即Amazonで購入ボタンを押しました
購入ボタンを押してから届くまでの間、一応この2年間でのフロントマンWill Toledoの活動を調べていると、どうやら2018年からAndrew Katzというビートメイカー/プロデューサーと手を組み「1 Trait Danger」というユニットでヒップホップ/エレクトロポップ系のアルバムを2枚発表していたようです

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聴いた感じ結構おふざけ要素も強いユニットのようですが、その2作品を経て今回のCSHの新作はそのAndrew Katzもかなりプロダクションに関わっており、今回僕が第一印象で抱いた打ち込み要素の原因となったようです

そしてもう一つ、CD盤を聴き終わった直後「…そういえばSpotifyで聴いたEDMっぽい曲無かったぞ…?」という疑問が湧きました
これに関してもやはり理由があり、ファンがそれぞれのメディア媒体で聴き比べた結果によると

・CD盤、LP盤、配信盤で音源の内容が少しずつ違っている
・特定の曲でremix等の再編集がなされていない事を加味すると、元の音源として参照すべきはLP盤、次いでCD盤になる

という事がわかりました(画像は海外サイトRedditにて貼られた比較表です)

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でまあ、ここからは自分の感想なんですけども
ロックバンドとしてある程度想定内の場所に冒険してしまったなーという失望です
インディーロックの発展の流れの中で電子化/ダンスロック化って避けられない部分だろうし、特に四つ打ち系はその傾向が強いのも、
ストパンクバンドBloc Partyが2016年に出した「Hymns」、
バロックポップバンドBelle and Sebastianの2015年作「Girls in Peacetime Want to Dance」、
日本のバンドで言うとGalileo Galileiの2012年作「Portal」等々…
挙げていけばキリが無いといいますか、"生の補正できない部分に打ち込みによる音の色や配置が全て調整された部分をどう折り込ませていくのか"みたいな実験要素って一回は通ってもおかしくないと思うんですよ
僕が大好きな日本のバンドBase Ball Bearもあれだけ生のグルーヴに拘ってきていたのに、2018年にフロントマンの小出祐介がマテリアルクラブという名義で完全打ち込みアルバムをセルフタイトルでリリースしていましたし、
なので驚くべき新開拓では無いのはわかってる上で、このバンドもやっぱりそっちに向かって行ってしまったか~…という想定外な想定内の流れにガッカリしてしまったのが大きいですね
あと、僕みたいなそこまで音の聴き分けやら分析やらが出来ない人でも打ち込みだとわかるくらいにはドラムの音色がダサい!!2曲目の「Can't Cool Me Down」なんかはダサすぎてドン引きですよ

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他にも印象的でカッコいいギターのリフがあるのですが、打ち込みドラムのダサさが全部それを帳消しにしている部分が多いです


数年前からWill ToledoはTシャツからガスマスク+作業服という独特なアーティストビジュアルに変えてこれまでの典型的なインディ然としたイメージの脱却を図ろうという意識は見た目から分かるのですが、ガワの変化に中身はあんまり追い付いて無いですね、というより完全に不相応すぎて違和感しかないです

とは言え良い所もあって、歌詞の暗くてシュールな世界観は健在ですし、何よりアルバムを一周するのに43分という驚異の短さ!!(近年のアルバムは基本的に70分越えでした)
音以外に何かを削ぎ落そうとしているのか、それとも曲の新しい構成方法を開発しているのかはまだ聴いていても分からないのですが、そういった見えない水面下での実験的な動きが次回以降芽を出す事を願ってます


という感じで何か衝動的にキーボードを叩いてしまいましたが一応文章としてまとめられて良かったです

終わり

 

 

ちなみにSpotifyで聴いたダサいEDMっぽい曲というのは↓です(CD盤未収録)

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(ダセぇ…)