夢の三角木馬

ما رأيت وما سمعت

「Franz Ferdinand / right thoughts, right words, right action」(7.8点)

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このアルバムが発売された当時、ボーカルのAlexが「すべての音楽はポップでなくちゃいけない」と言っていたけれど、それをちゃんと実践してくれていたアルバムなんじゃないかと思う。そして前作「tonight」で感じた「『踊れるロック』からの脱却」を見事にバンド自身が否定してくれた。きっとFranz Ferdinandは音楽の「楽しさ」についてかなりアプローチ出来る域にいるのだろう。恐らくここまで来たらあともう少しなんじゃないかな。

(小説)「西尾維新 / 戯言シリーズ」(5.3点)

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実は三作目「クビキリハイスクール」までは中学の頃に読んでいたけど、受験やらなんやらでそのままにしていた戯言シリーズ、あれからもう数年が経ち割と暇なこの状況でまた読んでみようか、と去年の年末に意気込んで一気読みした。

正直、読まなくて良かったのかもしれない。中学の頃のなんとなく「面白かったなぁ」の気持ちで終わらせるべきだったと思う。

何がひどいって、最終章の上中下巻の三巻にわたって繰り広げられる最終章「ネコソギラジカル」が本当にひどい。正直言ってひどさはここに詰まっている。三巻それぞれの本の厚みは相当なものなのに、書いてある内容が薄い。というか、文章におけるムダが多い。どうでもいい主人公の自分語りで3ページ4ページ消費されると、ここまで耐えて全文に目を通して読んできた僕でも流し読みをしてしまうレベル。さらに、主人公は一作目「クビキリハイスクール」から毎巻、事あるごとに友達である「玖渚友」との昔からの因縁についての思わせぶりな事を語っているが、最終章でその全容が明らかになると思いきや、ならない。

そう、ならない。

ひどいよこれ。多分ここまで読んできた人達の大半はそのことを知りたいから下巻まで頑張って読んできたのに、ほったらかしにするんだもん。他にも色々細かい伏線やらが回収されていないこともあるけど、そのあたりは目を瞑るにしても、こればっかりはどうしようもない。

別にミステリ要素を途中から無くしたり、キャラクターをすぐに殺したりするのはいいんだよ、そこは西尾維新の他の作品で学んできているから。でもさぁ、終わらせるところはちゃんと終わらせようよ。「終わりよければ~」なんてよく言うけど、これじゃ「終わりよくなければ全てよくない」だよ。

「D'angelo / Voodoo」(4.6点)

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やっぱさ、大人数が傑作だのなんだのと称賛しても、やっぱり大人数は大人数であってそこには少数派が存在しているわけじゃない?100人中97,8人が満点を付けるような絶賛をしても、残りの2,3人はどう頑張っても満点をつけられるような代物ではない、と判断するものがあるのって当たり前だよね?僕はつまりその少数派であって、このアルバムは全くいいとは思わなかった。

なんだよ、D'angeloが十数年ぶりに新譜を出すってんで、じゃあこの「Voodoo」を先に聴いて、良かったと思ったら新譜買おう、みんなが良いと言っているんだからどうせ良いんだろうけど、なんて買って聴いてみたら全くピンと来ないのな。完璧に僕はこのアルバムと波長が合わない。ビートがどうだの、ソウルミュージックがどうだのよくわかんないけど、完璧にイマイチだったわ。でもまぁ、もうちょっと時間を置いてからまた聴いてみようかな。

「Sigur Ros / Med Sud I Eyrum Vid Spilum Endalaust (邦題:残響)」(8.0点)

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いやこれめっちゃ聴きやすい。僕は「Agaetis Byrjun」⇒「()」⇒「Valtari」と通って来たけど、このアルバムが4枚の中で一番好きになれそうかも。それまで海外の音楽誌で「Agaetis Byrjun」が2000年代の名盤としてかなり推されてて、どれどれどんな感じかなと聴いてみたけど、個人的には「……ま、まあ…こういうの、好きな人は好きなんだろうね…」っていう感想だった。はっきり言って、ちょーー退屈。でも「()」も「Valtari」も僕が色々音楽を聴き始めてからの節目節目に買っていたもので、毎回慢心ながら「自分の耳が段々肥えてきたから、もしかしたらこれはよく思えるかもしれない」と思い込んで買って、そして毎回後悔するパターンだった。

しかし、今回のこのアルバムはかなり聴きやすい。時期的には「()」と「Valtari」の間なんだけど、このジャケットの天気みたいにすごく明るい曲調の曲が多くて、どういうわけか超ノれるアルバムになってる。二曲目なんか縦ノリ出来る。初めてだよ、Sigur Rosで縦ノリするなんて。騒ぐところは騒ぐ、静かなところは静かに、とメリハリが付けられているのもよかった。本当にあっという間に一枚ぶっ通しで聴ける。これまで1枚まるまる通して聴くのが割と苦痛だったSigur Ros、このアルバムで見方が少し変わったかも。

「Godspeed You! Black Emperor / Allelujah! Don't bend! ascend!」(8.3点)

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Godspeed You! Black Emperor」だって。すっげぇバンド名だな。妹にバンド名言ったら「厨二臭い」と言われたこのバンド、もう20年近く活動を続けているらしい。このバンドは「後期キング・クリムゾンのフォロワー」とか「ポストロックの真打」とか色々言われてるけど、あんまりどれもしっくりこないんだよね。このアルバムは一番最近(2012年発売)のアルバムなんだけど、本当に唯一無二というか、音の作りが壮大というか、なんていうか言葉では表せないスゴさなんだよね。自分の経験していない範疇を超えているから言葉が出ないというか。確かにポストロック的なやり口ではあるんだよね、Mogwaiがやってるような静と動の繰り返しを活用させたり。でもなぁ…「ポストロック」という言葉の定義で収まっていていいような作品でも無いんだよなぁ…

もう少し聴き込んでみる

(映画)「英国王のスピーチ」(8.7点)

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前々から気になっていた映画。ようやく観れたけどかなり面白かった。僕の近しい人も吃音を患っている人がいるんだけど、なかなか吃音そのものが病気の一つだと未だに理解されていない現状があり、吃音の辛さを表現するにはこの映画のように吃音患者その人の視点から辛い現状を描いていかなければならないという事がわかる。また、この映画がアカデミー賞作品賞を獲ったことで着実に吃音の症状を理解してくれる人が増えていくのはとても喜ばしいことなんじゃないかな、って思ったり。

(映画)「トゥルーマン・ショー」(7.0点)

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「自分だけが世界から監視されている」ことを題材にしたサスペンス映画って、意外と沢山ありそうであんまりない気がする。この映画って、物語の裏の思惑を読み取ったりすることもできるよね。例えばトゥルーマンを全世界の前で放送禁止用語の発言を連発してしまうような言葉遣いの荒い人間にならないように、「テレビ向け」の人間になるように教育を施すことができている。これはすなわち「教育」によって人格をもコントロールができることを暗に示唆している(あくまで僕の推論)可能性だって出てくる。「監視」だけがこの映画の題材ではないのは明らかだと僕は思う。