夢の三角木馬

ما رأيت وما سمعت

「Grouper / Ruins」(8.2点)

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僕にとって今まで聴いてきた「アンビエント」というジャンルに対して思っていたことは「静寂」、「無機質」、「寒々しさ」、「空虚」とかネガティブなイメージしかなくて、そういった負の性質を帯びた音楽を世のアンビエント愛好家は好んで聴いているのだろうな、と勝手ながら思っていたけど、このアルバムで考え方を変えなきゃいけないのかもしれない。

確かにこの作品は全体的な音こそ静かで、間違っても満員電車の中で聴くような音楽じゃないんだけど、この作品はとても暖かいんです。本当に暖かい。吹雪の中、山小屋の囲炉裏で炭を燃しているような、そんな暖かさ。強くはないんだけど、確かに火はそこにある、安心感とでもいえますね。終始一貫してピアノサウンドをバックに、今にも消え入りそうな声でボーカルElizabeth Harrisが歌う。メロディーもどこか叙情的で、感傷的になってしまう。なのにその音に身を任せていられる。そこにはやはり他のアンビエントでは見いだせなかった暖かさがあるからではないのでしょうか。